「第四の壁」→「異化効果」
「第四の壁」という言葉は劇場で生まれた。すなわちごく普通の三つの壁で覆われた舞台が言葉通り「第四の壁」を与えたのである。しかしながらこの言葉は映画、テレビ、文学といった他のメディアでも使われており、フィクションと観客との境界を示す一般的な言葉として用いられる。

第四の壁はフィクションと観客の間にある不信の停止(観客はフィクションを見ている間は「こんなことは実際には起こらない」などという無粋な突っ込みを抑えること)の一部である。通常、観客は第四の壁の存在を意識することなく受け入れており、あたかも現実の出来事を観察しているかのように劇を楽しんでいる。第四の壁の存在はフィクションにおいて最も良く確立された約束事の一つであるが、演出上の効果のためにその存在を直接意識させる場合がある。例えばA.R. Gurneyの『The Fourth Wall』においては主婦ペギーが自宅の何もない壁に対して強迫観念を抱き、そこに4人の登場人物が関わることになる。彼らは次第に演劇上の様々な約束事に引きずり込まれ、舞台の上の家具や行動はいわゆる第四の壁に対するものになっていく。

「第四の壁を破る(異化効果)」by wikipedia
演劇において「第四の壁を破る」という言葉は、人物や何らかの舞台装置の働きで、役者達が観客に見られていることを「自覚した」ときに用いられる。この用語が初めて用いられたのはベルトルト・ブレヒトが、コンスタンチン・スタニスラフスキーの演劇理論を元にして(また、対比的に)作り上げた「叙事演劇」の理論の中である。最もよく見られるのは人物が観客に呼びかけることで第四の壁を破るものだが、それ以外にも演技を止めて素の役者の立場に戻ることや、会話によって、また人物が物語の状況の外にある事物と関わること(例えば人物が小道具を舞台係から受け取るなど)によって為される場合がある。

様々な演劇家がこの神経に障る効果を使って焦点をはっきりさせようとするのは、そうすることでフィクションを新たな光で照らし、観客がより能動的に劇を見るように仕向けるためである。ブレヒトは意図的に第四の壁を壊すことで知られており、観客に見ているものをより批判的に考えるよう促した。これは異化効果と呼ばれている。