バオバブの記憶 @ポレポレ中野
西アフリカ、セネガル。ここには樹齢1000年とも言われるバオバブの林がある。
「足の痛みにはバオバブ」。落ちている枝を3つ選んで足に紐で巻けば3日で治るという。トゥーバ・トゥール村に住む人びとはバオバブとともに生き、バオバブに感謝しながら生きる。その村で暮らす家族たちの生活を追ったドキュメンタリー映画である。
セネガルは元フランス植民地。イスラム教とバオバブが心の拠りどころだ。ラロという鉄分、カルシウムが含まれるバオバブの葉は細かく砕いて主食のミルに混ぜる。実にはビタミンCが入っている。他にも枝、樹皮にも薬効成分があるという。乾期の間であれば動物たちが水分をとりにくる。しかし、生活に欠かせないバオバブも開発の手から逃れることはできない。都市に近いある林は開発のために切り倒された。
バオバブおじさん 教えておくれ 100年前 ぼくたちはどんな暮らししてたの」。語り継がれるバオバブの唄。いつから人間だけが地球の時間を超えてしまったのか。
開発と環境という二項対立はさまざまな議論がなされている。どちらがいい、ということはないだろう。実際、出演する村の人びとはどこかで大量につくられたTシャツを着て、「生きるために生きる」生活をしている12歳の少年は学校に行って勉強したいと望む。しかし、生活を支える木を切り倒し、いまの生活を崩す権利がだれにあるのだろうか。