大学院志望動機
第一に貴校の学生との交流で、大学に幾度か足を運び慣れや親しみがあったことが挙げられます。1回生の春休みに参加した学生ワークショップで芸工生と知り合い、それ以降3回生の小学校や三宮マスタープランなど設計課題の講評会や卒業設計の発表など訪れました。現在貴校の学部生・大学院生である方に知り合いもおり、大学内での講演会等の情報をいただいたりもしました。
また、建築の教育だけでなくデザイン全般の教育が受けられること、すなわち建築デザインからメディア等についてまで総合的に学べる環境があることが貴校を志望した動機です。


入学後の研究の目的
私は、建築において根底に存在するもの、大きな枠組でいえば様式、小さい枠組では建築家のイデオロギーに興味があります 。それらを時代の中から汲み取り、編集行為を通してそれを表現し、伝えることが私の現在の関心です。
中でも雑誌は全体のデザインから一つの文章、写真まで、多くの記号を使用する多様なメディアであると考えます。さらに、情報を定期刊行物という形で編んでいき、時代の連続性を構築する。このことは雑誌が機能、構造などのエンジニアリング的側面に加え、空間表現という芸術的側面、さらにはそのモードや伝統などを含有する建築においては大きな影響のある体系であることを示していると考えます。
その中でも中村敏男氏の編集長時代の「a+u」は、現在刊行されている「a+u」の土台を作っただけでなく、定期刊行として新築紹介をする一方で臨時増刊としてアメリカのスカイスクレイパーや近代建築の特集を組み、全体として雑誌の自律性がある中で現代を相対化するような批評そのものであると考えます。また、中村氏は現在海外著作の翻訳等をされており、建築史研究者として現代と歴史をつなぐ役割をなされています。この研究の目的は言語を記号としたと批評ではなく、雑誌全体の連続性においての批評を明らかにすること、さらには現代と歴史を対峙させる土俵としての建築雑誌を分析することにあります。


方法と実施計画
まずメディアにおける建築雑誌の位置づけをつかむためにも建築とメディア・言説の関係性を明確にする作業を行います。その際に近代・現代建築についての知識を補足した上で「a+u」の研究に入っていきます。
そしてなるべく早い時期に中村氏本人や編集部員、またこの雑誌に関わりの深い建築家や歴史家などへのインタヴューも行いたいと考えています。


これまでの研究・制作
これまでは制作を中心に建築を学んできました。課題の他にワークショップや展示会の設営スタッフなどに参加することで得た学生のネットワークを使い、近畿圏の大学の設計課題講評会などを見学してきました。自分の大学で学べる建築だけでなく他大学の教育も視野に入れ、自分の大学の教育と自分自身を相対化する意識を持っていました。