Y-GSA、植田実氏の講演会@桜木町創造空間
いうまでもなく雑誌『都市住宅』の編集長で、歴代の雑誌編集者の中でも伝説的人物である。今活躍する建築家はみな影響を受けたほど、影響力の強い雑誌であったらしい。
卒業設計の話、大学の課題における住宅課題の変化の話をし、普通の住宅などない、住宅設計とは…というアプローチを作る。
そして編集者としての氏の講演は先日発売された『住宅クロニクル』という12のテーマを扱った2冊に渡る書籍から「上下足」というテーマにフォーカスをあてて進行された。このようなテーマが並ぶこの本はつまり、住宅のデザインが生活と密着したデザインから作られる、またはそのものであることを暗示している。
ハーフティンバーや日本的なもの、石のテクスチャーなどのヴォーリズの住宅における折衷主義的な設計手法には、ヴォーリズ自身のライフスタイルへの思いが込められているとする。玄関に設置された靴箱を兼ねたベンチ。これはヴォーリズがここでこそ時間をかけるべきだという思いが伝わってくる。氏の建築家並みの観察眼には本当に恐れ入った、という感覚がする。
足下を見る住宅史。これが氏が言いたかったことなのだろう。その後も靴を脱ぐという行為の強さ、そしてその普遍性に着目し、世界中の生活における上下足を検証、していく。

最後、途中まで少し肩すかしな印象を受けていた。ジャーナリズムそのものの話を期待していたからだ。
しかし、やはり氏は一枚も二枚も上手だった。最後の先生に意見を求められた所で、山本さんが「少し忘れていた感覚」という言葉を発せられた時にハッとした。「靴を脱ぐ」という行為から建築をスライドで見せ続け、最終的に聞き手にに気づかせること。この行為そのものがジャーナリスティックなのだ。都市という前提が大きく出ている現在の風潮に対し、身体性の感覚を呼び戻す。それを講演会というインスタントな場でやってしまう、真のジャーナリストの姿を見せられた。