北の橋 Le Pont du Nord [DVD]

北の橋 Le Pont du Nord [DVD]

監督
Jacques Rivette ジャック・リヴェット
キャスト
Bulle Ogier ビュル・オジェ
Pascal Ogier パスカル・オジエ

主人公が事件に巻き込まれていくサスペンス系の映画だと思うが、おそらくこれに物語はないと思う。
それよりも現在のラ・ヴィレット公園の科学博物館みたいなところ周辺の建設中の場面がドキュメントとして映されているのが貴重だと感じた。パリは凱旋門や中心の街並をみると出来上がっている感覚があるが北の方のラ・ヴィレットは開発された比較的新しい土地で、パリの裏側を映した作品だといえる。おそらくこの辺が先生がいっていた「ファンタジーなのにリアル」というところと繋がってくるのだろうと思う。
都市における「表側」と「裏側」は単に都会と郊外、建築の外部と内部だけで区別されるものではなく「完成した」状態と「未完成な」状態とで区別される。都市は人間の集合の延長上にある。人間が生活をしている痕跡、その途中段階として都市に表れる。

この物語に出てくる「マリー」は閉所恐怖症でパン屋にも中に入れぬまま注文したりホテルに入れないため恋人が中にいるかどうかもわからない。この設定が必然的にパリの公共空間の外部しか映さない。さらに物語は双六に左右され郊外へと登場人物は移動していく。

パリはファサードの都市である。街路を彩る建物のファサード、川の空間を作るファサード。さらには「北の橋」で58番地のドアを開けた時バチストのいう「これは驚きね」という発言に象徴されるようにファサードがあればそこに何らかの内部空間があると勝手に想像してしまう。つまり、ファサードは仮面のようなものである。その裏側に内部を隠してしまう。
その一方で42番地のような建設中の場所は建物のファサードができておらず内部だけが露出している状態である。また、タンクのある塔の近くは廃墟となった建物を取り壊す作業が行われている。これらの状態は未完成な都市であり人が日々動き表情をもち生活している未完成な情憬と符合する。廃線近くの高層マンションみたいなものの無表情さは周囲の動きのある風景とコントラストをなしている。そこでバチスタは「私たちってどこから来てどこへ行くのか」人はこの問いをし続けながら生きていく。それがこの建設中の都市とかぶって見える。

「この世界が終わる前に本当のよそにいってみたい」
「完成した」状態はそこに都市があり
そこには都市のリアルがある。