建築 創刊:1960年(1972年休刊)
「新建築」編集部で働いていた平良敬一が鹿島出版会に移り編集長として創刊した雑誌。川添の批評的な態度を受け継ぐ雑誌で、初めて作家特集を組んだ。
徹底した客観化を図った雑誌として評価できると考える。この雑誌では今日では見ることのできない編集部員の批評が多く載せられている。増沢洵の特集であるにも関わらず、増沢本人の言葉は「建築に対する覚えがき」というアンケート形式の2項だけである。その他の部分は編集部員が批評を担当し、総論、作品論、ディテール論まで行っている。
例えば、編集委員の山本は、材料の性質や原型に関係なくそれらを自分の表現に取り込む一貫性のある「つくる創造」ではなく物の性質と形に内在している可能性を捕え素直に発展させ組み合わせていく「えらぶ創造」をする総合能力と素直さをもつ建築家だと評価している。
このように『建築』は現在出版されている作家特集のようにただ作品と作家の言葉を載せているだけではない、かなりエネルギーに満ちた編集方針をとっていた。