思考の整理学 (ちくま文庫) 思考の整理学/外山滋比古
この本に記述されていることは、生きていく、あるいは思考をする上で人が当たり前に行っていることだ。何かの目的のために思考を整理するための方法を一般化(整理)し示してくれている。日常的に行っていることを「本」という体裁まで昇華したこの文章はそれを読み実践することも意味があるだろうが知識としてインプットされるのは一つ二つの例や本当に知識としての言葉の集積だろう。それよりも、これを読むことによって今までの思考を整理し再確認する意義の方が高いと思われる。これが名著として再版される理由であろう。
もう一つ、この本の中(初版:1986年)では触れられていない点がある。情報化は所々で示唆されてはいるが、アウトプットとしての、道具としてのコンピューターの使用である。「書いてみる」という行為は整理することに適当であるとかかれてはいるが、このブログのように個人が自分の手帳として書け、さらには編集すらもできるということはその効率性を上げることができるということである。このブログのような存在はこの時代には一般的にまったく存在しなかったであろうから、現代の読者はこのことを踏まえるとさらに回転を加速することができよう。
つまり、結果としてはこの本は人間の思考に関する根本的な事柄が記述されているがゆえにかなりの強度をもった本であるといえる。