横浜トリエンナーレ
 横浜トリエンナーレは、横浜の関内の港湾地区を中心に広がる国際美術展。世界中から様々なアーティストの作品が集まっている。メインの会場は横浜のアイコンのような存在の赤レンガ倉庫や独特の雰囲気を持つ日本郵船海岸通倉庫、横浜最古の埠頭にこの夏完成したばかりの新港ピア。その他にも大さん橋国際客船ターミナル、ランドマークタワーのふもとにあるランドマークプラザなど市内の各地に広がる。巡回バスも特別に運行しているが、街並の中の建物も見たい場合は、自転車が便利。レンタサイクルもところどころで見かけた。

 トリエンナーレに出品している作品は映像作品から場所に対応したインスタレーションまでさまざまだが、中でも場所を意識した作品も多くあるため、西洋文明の輸入口であった横浜の歴史的建造物見学も兼ねることができるのが最大の魅力だ。効率や使い勝手など、もう現代のそれには見合わなくなってしまった歴史的建造物群を、アートという媒介で現代に蘇らせようとする狙いが垣間見える。それに加え、単に歴史的な建物を美術館などに転換して立派に残すのでなく、トリエンナーレのような「祭」の器とすることで一般の市民や来客者にも気軽な接点を提供しているともいえる。横浜にいながらあまり知らなかったぼくも、関内周辺を知るいいチャンスになった。
 

 今回のトリエンナーレには市民も手伝い以上に参加し、街全体の活性化にもうまく組み込めているという。これはアーティスト出展作品にも通じるが、「これがアートだ」という古典的な取り組み方ではなく、「これもアートだ」という現代アートの最前線を感じる。インスタレーションの中には単に眺めるだけのものだけでなく、鑑賞者が動き回ることで完成するものも少なくない。

 とりあえず赤レンガ倉庫に行ってみると、早速人だかり。しかし、アートに人が群がっているのではなく、ビアガーデンで午前中からみんなビールを片手に談笑している。街全体を飲み込んだ祭だけあって、会場になっている施設以外でもいろいろな催しがあるようだ。祝日ということも相まって、本当にどこかのお祭りに参加しているようだった。赤レンガ倉庫の会場である1号館だけでなく、2号館の飲食店街も賑わいを見せる。

赤レンガ倉庫だけでなく、大さん橋ランドマークタワーにも展示は分散している。大さん橋の内部には宇宙船のような物体があり、中で映像作品を公開している。まるで鯨の胃の中に迷い込んだピノキオの物語の現代版のような光景だ。