建築家の自由―鬼頭梓と図書館建築 建築家の自由/鬼頭梓+鬼頭梓の本を作る会 建築ジャーナル
建築家鬼頭梓は日本の図書館建築設計の五本の指に入る人物。前川國男事務所勤務のときには国会図書館にも携わっている。
実はうちの横国の図書館も氏の設計。おそらく理工図書館の方だろう。ホールのトップライトや座席、机の配置など心地よい空間が用意されている。なかでも本を読む場所は窓際の気持ちのよい空間であったり奥まって少し薄暗い集中するにはもってこいの空間であったりと様々な場所があり、中には寝心地の良い空間もある。これも図書館の醍醐味であろう。
この本を手にした理由は図書館建築もさることながら、建築家の職能問題に果敢に取り組んだ人物であるからだ。
「入札をしない建築家の会」を結成し、経済に傾倒し質の堕ちた建築を生産することにストップをかけようとした。入札とは設計者を募集し設計案を提出させ、その中から一番工事費の安い建物を建てるというシステム。質ではなく費用で建築が決められてしまうのだ。それを止める一つの手段として、というか絶対的な手段としてそれに参加しないようにしようじゃないかということだ。都市、建築の決めるのは金ではなく質だと言う事か。人によっては家に飾る絵を買う時に一番安いのを買うか?いや買わない。という例を挙げるだろう。それも事実ではある。しかし、現代のような時代の価値観はそのような「高くていいもの」ではなく「安くていいもの」を求めるのではないだろうか。その「いいもの」も芸術家から無理矢理に押し付けられるものではなく、自分にあったものをいいものと人は言うだろう。鬼頭氏を批判している訳ではない。実際に高く評価できる建築家の規範として挙げられる一人の人物であるし、設計の腕も相まって批判する気など毛頭ない。というか、今時入札なんてことば聞かない。談合とかプロポだ。
話を元に戻して、「安くていいもの」はどうやったら生まれるかという事。ビジネスモデルとして確立できる大量販売のプロダクトでもないし、かといって今バブルと言われているアートのように持ち主を変えられる訳でもない。一品生産品中の一品生産品なのだ。

……続きは次回。いつか分からんけど。