がらんどう がらんどう/古谷誠章 王国社
建築への愛着を生むためにはどうすればいいか.それはメタ建築のような虚構ではなく,実際に触れてもらうことなのであろうか.
古谷氏は,せんだいメディアテークコンペにおいて情報化を前提とした建築を提案するというある種の実存主義的な建築家である.この本は新建築などで作品を掲載したときの論考が集約されたものであるが,早い時期から公共建築の設計プロセスにおいてワークショップを開き,建築の公共性を高めて来た.建築とは虚構から生まれるものでもあり虚構がなければ成立しないが,それだけでこれからの建築は成立しない.地方において「ここにいる子どもたちが十年後にはここに帰って来てこの街を支える」ことを念頭に,市民に愛される建築とは何かということを追い続けた建築家の記録である.