朝一で仙台を出発し弘前へ向かう。途中八戸まで新幹線、特急に乗り換え青森、普通電車で弘前へ。昼過ぎには弘前へ到着。

なぜかやたらとビジネスホテルが多い。県庁所在地だからだろうか。

とりあえず前川國男の葬祭場へバスで向かう。寺院の並ぶ杉並木道を抜けたところに展望台があり、そこからどこかの市内と岩木山が望むことができた。その山は見た瞬間声を上げてしまったほどの絶景だった。稜線にそって積もった雪は緩やかに美しい曲線を描き、山裾まで延びるその曲線は山全体に力強さを与えていた。ここまでうれしく、興奮したものをみたのはいつぶりだろうか。建築とは違う、自然の壮大さに改めて気づかされた。

そしてすこし行くとその葬祭場はあった。しかし、丁度行事をやっていて写真撮影は不可。遠慮して見学もあまりしなかった。
入ったとたんにお経が聞こえてきたのが大きく関係していると思うが、どこか暗く、そして静かな恐怖が潜んでいるような空間だった。
大きな勾配屋根のかかる直線的な外観とは対照的に、葬祭場(あまり凝視はしていない)はアーチのかかるやわらかい、すこしどろどろしたような線をもっていた。力強く、モダニズムという言葉がよく似合う前川建築だが、この葬祭場はファサードではなくしかも直接的ではない力強さを空間に備えている。

その後は弘前市内の前川建築を見て回る。
中でもコンクリート打ち放し仕上げの市民ホールは森の中に佇むオブジェクトとしてかなりの強度を感じた。窓の少ない裏のエレベーションは、カーンの建築を彷彿とさせる。

弘前には教会や宗古など煉瓦の建物が多く残っている。それらの歴史的な建造物はまちの所々に点在し、ランドマーク、アイデンティティとして市民に愛されているようだ。実際に倉庫は一度取り壊しが決定したが市民の反対により現在も残っているのだという。
弘前は駅前こそジェネリックシティに近いが、あまり大きくもないし直行グリッドが敷かれていない道とそれらの歴史的な建造物が街全体のアイデンティティを形成しているように思える。

この日は青森県立美術館の開館い合わせたいわば暇つぶしだったが、思わぬ収穫が多くあった。