軍事要塞が津波から命守る スリランカ、ゴール旧市街について
2004年、インド洋で起きたスマトラ島沖地震による大きな津波。大きな被害が出たこの津波から、歴史的遺産が人々の命を守った例がある。それがスリランカの南に位置するゴール旧市街。ヨーロッパ諸国の植民地であったこの街は、スリランカの南、インド洋に突出するような地形をもつため、流通の重要拠点として整備された。
周囲には高さ6〜20mの城壁で囲まれている。この城壁は大砲を乗せるために頑丈にできていたため、1m2あたり18tの津波にも耐えた。この破壊力は、RCをも破壊する。さらに、街の中には大きな排水設備が整備されていた。このことは現代の人々は気づかず、津波により城壁のない北の方向から来た海水が道の真ん中に消えて行き、次第に街から海水が消えていったことでやっとその存在を知った。

この街は、歴史に活かされた。しかし、最も重要な事はその歴史を排除せず、今までずっと守り続けて来たことにある。今も、当時の建物を利用し、使い続けているという。イギリスの総領事館だった建物は豪華なホテルとして、東インド会社の施設は郵便局にといった具合に。さらに、ゴール旧市街に住む人々は、植民地だった過去を持つにも関わらず、街を「自分たちの街」といって誇りに思っている。

津波などの災害から守ること。それは街や都市の宿命であるようにも思う。地球に住み続ける上での災害から身を守るために作られた建物や都市は、人々を守り続けるためにはその土地独自の他律的な環境に対応していなければならない。逆に一度対応してしまうとそのなかに暮らす人々は安心し、結果的に建物や街を愛する事が出来る。