アーキニアリング‐デザイン展 @建築会館
 建築模型は実際の建築の縮小版と言え、見る者に疑似体験を与えることができる。そしてそれは建築家の設計過程におけるスタディのための建築模型でもある。
 今回の「アーキニアリングデザイン展」ではその中でも外観だけでは把握できない構造の流れを把握するための「構造模型」を展示し、丁寧な解説を加えてある。日本建築学会主催のこの展覧会は、学会の発刊する『建築雑誌』での学会長の斉藤氏のインタビューで一般への介入を図る意図が明確に表れている。
 
 全体は大きく七つの章に分けられ、それぞれに一定のテーマをもっている。
 展覧会は石を積み上げる組積造からフライングバットレスやペンデンティブ・ドームなど歴史的な発明といえる構造形態の第一章から始まる。そのあとで大阪万博のお祭り広場のメガストラクチャー、せんだいメディアテーク、カテドラル聖マリア大聖堂など高度成長期と相まって発展した20世紀の日本建築やそのときの海外の建築からなる第二章、構造計算などにコンピューターが本格的に導入され複雑な解析により有機的な建築が可能になっていくことがわかる第三章、大空間の確保のために発展した軽量で大きなドーム屋根などを中心にした第四章、21世紀にはいり世界各国で競争するかのように挑んだ超高層の構造的発展を示した第五章が主に建築構造の発展を示した展示になっている。さらに、第六章は身の回りでヒューマンスケールで活かされた事例、そして最終章となる第七章では地球を生活の現場であるとし、その基盤となる建築家による建築、都市の提案を紹介している。
 
 
 伝統的な建物からついこの間に竣工したばかりの建物まで、世界各国のの建築の模型が並ぶこの展覧会。視覚的に模型と文章で解説するものから、実際に指や手で荷重をかけてみてその強度を試すことのできる万人に開かれた展覧会だ。展示されている建築模型はどれもきれいなものばかりであり、この期間だけ展示するというのは非常にもったいない気がしてならない。解説を加えた展覧会自体建築の一側面を理解するのに十分な教科書であり、しかも実際に見て、という建築の理解には外せない要素を持ち得た展示内容であるからだ。