ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書) ウェブ時代をゆく梅田望夫
最近では利潤目的でないことの引用またはアナロジーとして使用されることの多くなった「リナックス」。世界中の研究者が新しいOSを作ろうと利益そっちのけでよってたかって進化させ続けた「オープンソース」と呼ばれる参加型プロセスをもつネット上(著者の言葉でいえば「もう一つの地球」)の成果物である。専門的関心という共通点のみで集まった人たちが無償で精神的充足のみのために働き続けるという本来の資本主義経済下の社会にはない、特殊な事象である。本来企業主義の社会では明日の消費者のために企業は試行錯誤をし新しい技術、知恵を社会に投入してきた。その見返りとして利益をもらう目的で。それが生産性を高め、効率を追求する結果となり、今の社会がある。しかし、「好き」というエネルギーはもっと自分に対しても向けられるものだ。それを可能にするのがネット、そしてそれを整備するインフラとしてのグーグルである。
今はおなじみのグーグルは、検索エンジンを開発し、それに連動型広告を組み合わせることにより莫大な利益を得た。全ての情報を整理することをミッションとするグーグルは無料でネット上の空間を使用することを可能にした。つまり、単語一つでつながることのできるシステムは結果情報空間の構築は誰でもある程度までの知識は得られる環境を与えた。

「好き」というエネルギーと、「オープンでフリー」な知的環境をフルに使うことで可能になる新しい職能。私は、新しい職業というのを目指していると自負できる。それを「架け橋」と表現して、建築と社会の間の新しい関係を結びたいと思っているし、その可能性として編集やメディアに期待して就職活動を行っている。
この本はそんな状況にある私にとって後押しをしてくれてるとしか言いようがなく、また無駄のないいつも傍らに置いておきたい本だ。