建築学生のハローワーク (建築文化シナジー) 建築学生のハローワーク五十嵐太郎 彰国社
建築学科を出るといろんな職業がある。その中でも、この本は建築を学んだ事をそのまま活かすということを目標にしている。大工やら編集者やら「建築」という言葉を使える職業ばかり紹介している。本来建築学科を出るとここの中から一つに絞り込むのだろうという強迫観念がある。日本の理系学科出身としてそれは当たり前と言えば当たり前であるので、こういう本は建築を目指す高校生などには建築家サロン的な世界観を助長するだろう。
日経アーキテクチュアなどでは既に特集されているが、建築の知識をそのまま使うだけでなく、設計課題から得られる与条件を一つの方向に収束させ、アウトプットとして出す能力やそのためのロジカルシンキングは他の分野でもかなり活かせるところだろう。建築学科という価値を、もっと社会に発信できる書籍も今後期待する。

世界連鎖恐慌の犯人 (Voice select) 世界連鎖恐慌の犯人/堀 紘一 PHP研究所
学問というのは身の回りのことより超越した事をさす事も多い。芸術でも科学でも数学でもその普遍性、本質は一般社会に表面化して浮き出てくるものではない。
それはどの世界にも存在していることは認識していたが、まさか経済の上位でしかも実際に儲けるという行為に還元できるレベルであるとはあまり意識していなかった。
この本でFEという言葉を初めて知った。さらにその金融工学という学問がヒルズ族を生み、金のために働く金融資本主義社会を生み出しているということも。
ぼくには株で儲けるということなどからは無縁の、モノ自体と向き合う建築を学んでいる。
金融工学、また、インベストメントが行っていることを本書では虚業としている。それは建築家の単なる空想遊びではなく、実世界とパラレルにある(といってもここでは問題はないだろう)虚の世界での遊びだ。それは建築雑誌で新しい世界観として取り上げられるサイバースペースなどという形而上的なものに近い世界ではなく、明らかに実世界に影響を及ぼす世界。その本質はレバレッジ先物取引、そして人の命であっても商品にしてしまう経済と金融の極端な成長から生まれたものだった。
本書は、金融資本主義社会が勢力を増した世界で、水面下からぼくたちの身の回りにある世界を操り、膨大な影響力、最強の黒幕を暴く。
説明もわかりやすく、金融資本主義の入門書としても推薦できる。