ネオ・トロピカリア|ブラジルの創造力 @東京都現代美術館

最近何かと話題のブラジル。こちらは日本人ブラジル移住100周年記念での展覧会。
60年代の総合芸術運動「トロピカリア」。「トロピカル」と聞くと南国のカラフルなイメージを想起する。それをオリジナリティとして発信した60年代から現在までの一貫した意思を見る事のできる展覧会だ。
全体的に色彩が鮮やかなものが多いが、中にはシックな建築的なものから生物的なもの、絵画からインスタレーション、建築と多彩な表情を見せる。27を数えるアーティストやデザイナーの作品が展示されており、展示面積もそれに対応して大きく、実に見応えのある展覧会だった。


○様々な生き物や布のようなものを描き、コラージュを作成するエリカ・ヴェルズッティの作品は、変容体の過程をみているようだ。コラージュと一言に言っても、彼女の場合は写真など別々の物質性をもつものを張り合わせたものではなく、同一の作品の中では同一の色調で描かれている。そこには別々の意思をもったもの同士の衝突ではなく、色彩の衝突を含んだ融合がなされている。

○一つの小さなホワイトキューブを使い、「クラゲ」と題された作品を展開させているのはマレッベ。病院の消毒剤の臭いのする空間に、天井に半透明の幕が張ってあり、そこから鈍い光が降り注ぐ。その中に身を置き、ガラスの花瓶を眺めると、意識がクラゲになったような逆縁現象が起きる。

コルビュジェの作品に影響を受けたような、地上を解放する建築を作るリナ・ボ・バルジ。機能的な形態とブラジルの風土をそのまま取り入れたような建築や住居。植物に覆われ、開放的な内部空間は南国という土地を受け止め、共存しているように見える。

○ファッションデザイナーのような作品をつくるロナウド・フラガは、その身体的な布に壮大な風景を取り入れたような作品を出品している。それはシックな服のようにもみえるが、どこか暖かい感情を想起させる。

○今回一番感動した作品は、リジア・パペのTteia 1,C。それは金色の糸を何本も張って作り出される幾何学的な立体である。しかし、暗闇の中に投光によて浮かびだされる物体そのものに力を感じる事はない。その微妙な力で浮かび上がっているような物体はCGをそのまま現実化したような神聖な光の塊となって眼前に現れた。

○リヴァーニ・ノイエンシュヴァンダーは、構築的な作品を写真に収めている。それはレンガや階段など、建築的なオブジェとして成立してはいるが、それもパンやパスタなど身近な食材等で構成されている。模型と建築の間のような構築的な物質を融解したような作品。

○ブラジルの音楽と、そのための衣装さえあればそれでいいだろう、と言わんばかりのエリオ・オイチシカの作品。音楽を聴きながら衣装に触れていると単なる音楽と布ではなく祝祭の感情まで至る。

○汚れた布や紙などひどく物質的なキャンバスに絵画を描くレオウニソン。幼稚さ、幼さを含んだ描写は、どこか暗いイメージを漂わせている。

○日本では問題になりそうなペイントを住民と住宅群に施すルイ・オオタケ。赤、黄、青など奇抜な色彩にされた街並にはどこか懐かしい空気があり、ブラジルらしい作品。

ルーベンス・マノは都市的なアーティストだ。ささやかな仕掛けをまちに施す事で街の表象を変え、また意識を転換させるインスタレーションを作っている。