誰が作ったかわからない、匿名の制作物。しかしそこにも、人の思いがこもっている。

今日行ったオープンカンパニーの企業は、誰もが知っているが知らない企業だった。
広告代理店だと思って行ったのだが、そうではなく本社の一階に飾られている成果物はコンビニにおいてある大きなマスコットのようなアイスクリームや会社案内、学校案内など、どこかで見たことのあるものばかりだった。
広告代理店と一致しているのはB to Bの会社であって、その価値を高めることを職能としているということだった。手掛けるものは広告だけでなく前述のような冊子や3次元的な広告。映像やポスターなど、「広告」という制約を超え、様々なアウトプットを出している、出せるのがこの企業の強みであり、大手の野球チームなど信頼度も高い。
そのような柔軟性と信頼を得る会社のオフィスは、個人個人のデスクは与えられているものの、デスクの境にあるパーティションは低く、顔を上げればすぐ同僚の顔が見える環境だった。その物理的な環境は、個人と集団の近さを感じた。
デザインを武器にする会社であるため、制作部門を抱えているが、その部門は主にクリエイティブな仕事をする部署と、会社案内のような説明的なデザインを行う部署がある。後者の部門が主に担当したと見られるこの企業の名刺には、名前や電話番号だけでなく、出身地まで記載されていた。出身地によりつながりを増やそうという意図である。単に企業の名刺というとジェネリックなものが多く、個人が表出されるようなデザインのものは少ない。その中で個人と個人の関係が重要になる営業が要になるこの企業は、ほんの少しのアイデアを含ませるだけで大きなビジネスチャンスにつながる効果を最小限のことで生み出そうとしている。
一つ一つのクライアントに対し、真摯に取り組み、最大の効果を得ようとすることは、大手の広告代理店だけでなく、注意してみればどこにでもあることなのである。