チェコキュビズム建築とデザイン 1911-1925 -ホホル、ゴチャール、ヤナーク- @INAX Ginza
物質に動きは、生命はあるだろうか。
かの天才画家であるピカソとブラックが二次元という平面上にあくまで二次元的表現で三次元を認識させる「キュビズム」という手法を唱えた。「ラファエッロの絵画で鼻の先から口までの距離を計れるような絵」、つまり物質という第一義的な存在をそれ自身で第二義的存在まで昇華させる試みはある種の生命的論理を彷彿とさせる。パーツやピースの完全なシステム構築だけに限定して物質以上のものを創りだす試み、それがキュビズムだった。
そのキュビズムを称賛し、建築に応用しようと試みたある作家たちがいる。それがチェコプラハの3人の建築家である。多くの若い建築家と同様に彼らは1900年までの近代建築を批判、新古典主義ゴシック様式に新しい可能性を求めていた。そのなかでもx-y軸に斜めのカットを行う結晶体や物質に精神と活気を与えるキュビズムのような建築を創りだした。
チェコキュビズム建築の建築家、パヴェル・ヤナークは、「自然界にある見えない力でできたものが結晶である」として、力の可視化を試みる。後のロースやデ・ステイルが垂直水平に向かうのに対して結晶は角度をもった斜線である。この動的な直線は、有機体としての存在を主張するように私たちに何かを訴えかけるようだ。