存在の耐えられない軽さ (集英社文庫) 存在の耐えられない軽さ/ミランクンデラ 集英社
小説とは何なんだ。
ストーリーを構築し、人生を描く。人の心を描き、人生の暇つぶしになる、少なくともこの物語はそんな軽いものではない。「小説は自分自身の延長上に描かれるものだ」と作者自身が「私」として語っているように、常に作者と登場人物という構図を意識させる、全体としてはいわば哲学書のような本。
単調な毎日に嫌気がする、という繰り返すことに対して一定の「恐怖」を感じることに、この本は衝撃的極まりない。それは自分の弱さの再確認であり、何か新しいことや人と違うことをするという重みのない行為に空虚をもった、形骸化した錯覚をもたらす。否定することは自分の弱さを隠すためだけのものであり自分の完全さを傲慢に披露する限りなく滑稽な行為である。
人生は存在の絶え間ない繰り返しによる軽いものであり、そのなかでの軽さとは死という生きている者にとっては確定した前提条件から得られる。人生のなかの一つひとつの選択には重さはなく実験もなく単なる仮説の遊びでしかない。明日にはもう存在しない埃よりも軽いものなのである。
恋愛は人をどこまでも夢中にさせることのできる、何事よりも奥深いものだ。人生というものに対しての見方、考え方を今一度確認できる。