横浜建築都市学
We Love 天神協議会 事務局長 永竿哲哉氏 「多様な関係者と取り組む中心市街地におけるエリアマネージメント」

今日の講演者は西鉄の社員でもある永竿哲哉氏。
福岡市の中心部でもあり、博多駅から一駅の場所に位置する商業の街、天神。ここで協議会を組織し、天神という街の活性化を図る団体の活動をお話いただいた。
天神は商業人口250万人、3500億円規模の売り上げを上げる商業の街である。同時に、徒歩1.6kmの範囲内に機能が集約されているコンパクトな都市でもある。大正13年に九州鉄道ができ、昭和11年には一帯では初めてのデパートである岩田屋の出現から山陽新幹線の開通、大丸など百貨店の進出と鉄道と商業が密接に関係し合って集客の幅を広げながら今の姿に至った。
中心部はオフィスと商業施設が混在した状況にあり、平日も商業系の売り上げを見込むことができる。
経済成長とともに発展をする都市にはつきものの問題、解決すべき課題をもつ。特に郊外型ショッピングセンターとの競争、モラル・マナーの問題、交通渋滞などだ。これらの問題に対して、2004年11、12月に行われた社会実験を契機にこの協議会は発足した。
2004年に行われた社会実験は現在の協議会の根幹をなす活動として残っているが、都市としてのアメニティ再生や安全や快適さの追求を主に様々なイベントなどが企画された。歩行者天国オープンカフェの創設、無料のシャトルバスなど小さな枠組みを主とした交通システムの改善や歩行者を中心とした街の必要性に対して、説得力をもった実験だった。
この活動を契機に、百貨店などの大規模商業者や地区に関する企業、行政、そして九州大など教育機関の構成会員で多角的活動を行うまちづくり推進団体が誕生した。現在は任意団体として活動をしているが、将来的には今年度中に法人化を目標にしており、社会的信用度の向上や会長責任の有限化、さらなる行政からの受託事業の拡大を図る。
具体的活動としては平成20年度に承認された「天神まちづくりガイドライン」を軸に行っている。これは「天神文化賞」と題して市民から「天神はこうありたい」という意見を募集し、「天神まちづっくり憲章」を構成、天神の良識を言語化したものとして機能しているようだ。
その良識を根幹にガイドライン上では3つの取り組みがされている。それは目標とそれに対する戦略、そして検証である。「歩いていて楽しい街」など至って素朴なニーズを解決するために、イベントの連携と拡充、絵になる風景をつくるなどの戦略を掲げ、その結果をフィードバックして検証する。また、まちづくり推進部会という組織では歩行者天国や交通戦略など実践的レベルのものを行政などへ働きかける。今回の講演で印象的だったのは、その取り組みもそうであるが取り組みの説明の最後につくアンケート調査の実施確実性だった。
長く滞在する人であればあるほど休憩所を必要としているアンケート結果から数カ所のオープンカフェの設置を行ったりしている。
また、交通システムの改善にあたっては、フリンジパーキングと呼ばれる活動を行っている。それは都心周辺のパーキングを利用した人を対象として公共交通の無料券を配布し、都心の自動車の絶対数を減らすという取り組みである。さらに、都心には無料のシャトルバスを運営し、アメニティの向上への取り組みとなっている。
この協議会自体、商業側の人間が多く関わっているということもあるが「活性化」という点ではここまで大きくなったのは成功といえる。「住む街」ではなく楽しむための街であるためリピーターを生み出すのが目的であるような形になっている。
しかし、アンケートを主軸とし、一般の人の意見を取り入れ、実践にうつす仕組みとして、行政と商業者の間のような立場で街をゼロスタートではなく、選択肢を提供することで再整理している。結果として経済的に成功を収め、楽しい街を作ることも一つの目標であることは間違いない。