ヨコハマアパートメント/ONDesign
いくつかの起伏を登り降りして,雑踏な住宅地を抜けたところにある白い建築.
ヨコハマアパートメントは何気ない家々が建ち並ぶ町の中に突如出現する異物である.4本の脚によって4つの住戸が持ち上げられ,半外部空間となるピロティの拡張型とでもいうべきか,一見何もイデオロギーの存在しないような空間を生み出している.アーティストインレジデンスを掲げ,上階に住むアーティストが作業を行えるスペースになっている.今日のイベントは,アーティストの生活の一部である作業場面を顕在化させたものともいえるだろうか.そこに槇文彦氏のいう「誰もいなくても成立する建築」があるのかどうかを判断するためにはイベントとの断絶が行われている「日常」を注視する以外に方法はない.それは,建築の自律性と社会化された集団の関わりによって生まれるものではないからである.
この建築の内部からは時間的,物質的に様々な位相のものが見える.しかしそれは内在する物を含めた相対化ではなく,流入である.その流動性の根拠がどこにあるのか,それは外部からの視点と内部からの視点にある.外部から見れば脚元の広い,宇宙から降り立ったようなモダン的白の潔白さの象徴のように見える.一方で,内部からはそれは町を切り取るフレームと化し,「窓」というメディア化するための装置を超えた,接点を持ちながらも経験を促す装置となっているのである.方向性を持たない内部空間の壁的役割の要素は,もはやフレームの現象化を辿る.