・リノベーションシンポジウム @コーポ北加賀屋

基調講演、松村秀一氏から。
HEAD研究会の説明。日本の部品の潜在能力を解き放つということをミッションにしているという。「部品」は高い質を解き放つ能力が高いが,新築という分野に限ると小さくなっている。なんとか実践に結びつけていこうという研究会。タスクフォースは4つ。4つメがリノベーション、コンバージョン。

まず人口あたりの住宅着工件数推移のグラフを提示。5年置き、フランス、日本などの人口を件数で割ったもので、日本はかなり高い推移を示す。40年間、世界史に全く例のない部類で独自に建築,部品が発達してきた。
2009年に9.7件だったのが昨年は6件と唐突に減少。つまり、アメリカ,フランスなどと同じになった。この点に関すると普通になったと氏は認識。

氏は大雑把に以下のように解釈する。
社会全体に大きな「ものがたり」があった。「モノづくり」に打ち込めた時代から…個々の設計者、それぞれに物語を作る必要がなかった。時代の物語はあった。やっていけば物語に参加していける時代だった。
新しいこと、地道な職人作業、工場生産などが可能だった。
ではリノベーションとは何か。
社会全体の「ものがたり」は見当もつかない。身近な生活空間でそれぞれが実感できる「ものがたり」を見つける時代に入っている。
物語は生きていく上で必要。時代に先に物語がある時代は終わっている。この物語を作っていくことに参加していく、時代としての意味がある。
2008年10月現在で総住宅5759万、世帯4999万。つまり、空き家は798万あり、7軒に一軒が空き家になっている。

既に存在している建築産業がどういう方向に向いていくべきか
物語が不必要な産業が必要になるとは、ハコの産業から場の産業への認識の転換の必要性。ハコがある状況で、生活を実装していく必要がある。場と人を結びつけていく。不動産流通、マッチング産業に変化していく。
最後に建築界はハコづくりの人材育成も課題であるとした。

次にパネルディスカッション。
司会をstudio-Lの山崎亮氏、パネラーにblue studioの大島芳彦氏、SPEACの林厚見氏,アートアンドクラフトの中谷ノボル氏、みかんぐみの竹内昌義氏、建築家の納屋新、学氏。

まず大島氏から「物件から物語へ 共同住宅の時代」というプレゼ。アパートとマンションに系譜分けを行う。町家、長屋+木賃からアパートと、マンションは、共同住宅にはあったコミュニティは集合住宅のプライバシーへと移り変わった。しかし、共同して暮らす、つながりのある生活が求められているのではないだろうか、と氏はいう。
例は東京、大森の大森ロッヂだ。町工場のエリアにあり、8戸 300坪あり、先代から引き継がれたオーナーがどうするか考えた。マンションだと地域とコンフリクトを起こしてしまう。
そこで街の物語がどう変わったかを検し、 先の物語はどうなるかを考えた。ここは再開発ビジネス街の先にある街であり、ホワイトカラーの若者がいる。安いアパートよりも太陽、庭がついているものを求めている人がいるのではと思い、このプロジェクトは進んだ。
小さな物語をつくる。路地、街との関係性を再生していく。建物ではない。
新築のものとリフォームのものでは差がでる。住民は30代、女性が多く、みんな友達になってしまうという。
イベントをオーナーが企画し、みんなでつくっていく。ピザ釜、植物などをつくったり、餅つきイベントなどが催されたりと、これらは建物がなすというより、ここにいる人の価値観が同じだから,発展させていってくれる。
次に東京R不動産から林氏。
東京R不動産は個性的な物件だけを集め、マッチングさせるサイトである。物件はレトロ、眺望などの価値評価であって、建築家の設計などはコンセプトではない。吉沢氏と馬場氏が古ビルをウェブに月に4 ,50件アップしているという。6年間、2200件のマッチングを通して見えてきたポイントがあるという。
まず顧客。
フェーズ1 (2004-2005年) チェロ弾き浪人、ハプニング系アーティスト
フェーズ2 (2006-2007年) グラフィックデザイナー、出版社などクリエイティブ業
フェーズ3 (2008-2009年) ゴールドマンサックス、AneCan系など裾が広がる。マニアックなところから始まったが,ひろがりがありそうだという。

次に改装問題。
改修だけではない。改装OK物件もあり、退去時に生じるもめごとのあった件数を発表。
なんと、報告ベースで0件。オーナーが喜ぶ、結果オーライは多数あるが、結果残念というのも0件だという。
氏はここから、今の仕組み、慣習はリスクヘッジ過剰なのでは、と発言。

3番目に成約率の高い物件の条件。
1 緑が見える
2 床の質感がよい
3 広いテラス
以上のことはつまり、「気持ちいい」、ということであり、デザインのためのデザインは少し危ないかも、という。

次に紹介した事例は東日本橋のアガタ・タケザワビル。古い問屋街で、アートイベントをきっかけにR不動産は開始される。古いエリア ではあるが、交通の便、家賃などアップしてやっていく。最初の3年は誰もおらず、最後にやっぱり西がいい、などの理由であまり借り手がつかなかった。
それが07年から趣向がかわる。それがアガタ・タケザワビルだった。ギャラリー、オーガニックレストラン、雑貨屋、ジュエリーワークショップ、たろなすギャラリー入居など変化していく。前述のフェーズ3のゴルドサックスまんまで目に見えてかわってきた。最初はアーティストからの興味だが,人が集まって場がこつこつとできあがってくる。

次にアートアンドクラフトの中谷氏のプレゼ。
なぜ宿泊なのにきたのか。最初に自らを問うゆうに氏はいった。
氏は4月で17年目、営業、設計、工事などをやってきた。氏は「こんな住まいあったらいいよね」というのを考え始めて、最初にやったのが結果的にリノベーションだった、と説明する。 つまり、住まいの多様化がやりたかった、と。高校の時分から倉庫など、やりきってしまったが、バックパックで旅をしたときに宿に暮らしたい,と思いついたのだと言う。しかし経済的に考えれば宿を経営してやればいいんじゃないかと考え、その第一弾が「ホステル64」である。住まいはこう、などの区別が氏の中にあまりないという。HP
ホステル64は産業でカテゴライズすると観光業である。ストックが大阪は元々あり、宿の良さは街の人口、大阪のストックに影響し、大阪に活かしていけるのではないかと氏は考える。大阪の人口にしてしまうために、長期滞在も受け入れていくという。

みかんぐみ、竹内氏。
R不動産の馬場氏ともアートイベントを行っているという。紹介するプロジェクトは「丸屋ガーデンズ」。鹿児島のデパート改修である。耐震改修デザインは神田、上野ビルのときに飛び込みでしていたという。その頃から耐震改修とリノベーションは切っても切れないと氏は考えてきた。
会う人会う人に耐震改修の可能性を説いてきたという。09年にこの建物から三越が撤退したが、借り手を探すのではなく、自分たちでやるという決断を経営側が行った。鹿児島の山形屋という老舗のデパートは三越が鹿児島で2番目、三越に建物を貸すということをしていた。
ここでみかんぐみは確認申請には出したくないと考えた。しかし一般的にはほとんど不可能である。そこで改修工事にするということになった。半分以上変えないこと、床面積増加不可、増築の繰り返しで階段が多いなどの問題は多くあるが、階段を床にしても面積は増えてない、という論理で比較的自由に行ったという。次第に増築し、避難安全検証法を活用し、蓄煙を前提にして階段を減らしていく。
経営側から「丸屋ガーデンズ」というコンセプトを提示され、 壁面緑化をすることに。経済の退化がうまくリンクしているという。つまり、工夫をしなければならなく、家賃収益、百貨店が土地貸しになってしまい、堕落しているのではないかという。 そこでD&Departmentナガオカケンメイ氏に相談、丸屋がテナントとしてやるから応援する、という形に。デパートをミュージアム、コミュニケーションのある建築に。コミュニティをつくったギャラリーのあるデパートをつくることを山崎氏が入って行われるという。内部としては天井高確保のため配管は露出、床はビニールを避けてフローリングでオープンする。

次に納屋兄弟のプレゼ。
10年前はリノベーションという言葉は浸透していなかったという。氏らの仕事では新築60件、リノベーション20件と全数比が20%の割合で改修を行っている。
秋田の「湯沢の住宅」は豪雪地帯に建つ住宅で、初雪で家が埋もれるくらいの2,3m級の降雪が降る地域である。クライアントは新築希望だったという。しかし二世帯+姉が住み、2000万以下という無理な要望であった。
とりあえず話を聞き、蔵があり、話を聞くと中は使えるということでリノベーションを寒さが厳しいので、土間など古い空間の風習を提案しながらやっていく。
リノベーション後は周囲に空気層のように、回廊を挿入した。新しい空間を挿入することで新旧のコントラストを思考、外壁周りはやり直し、いろりが3つでてくるなど現場で発見が起きる。解体で空間が見えてくる。瞬時に判断しなければ進んでいってしまう。

一部のプレゼは以上で終了し、司会の山崎氏からディスカッションのかわりにエピソードや物語を各パネラーに求められた。
大島氏は設計=映画を一本つくり、舞台装置をつくると考えているという。規模は関係なく、物語をあてがい、価値観の共有がある。小さな物語は物件探し,デザイン、施行全てであり、物件探しから物語が始まる。「駅から何分」というのもお金に換算でき、それと家具などをどうするかを編集すると返答。
林氏はイメージはあるが、普通のひとは手だてはない。地元の不動産屋はわからないし、建築家は少し重い。その間をつなぐような感じで考えていると応えた。
日本橋では物語の上に物語を重ねることを行った。房総R不動産は九十九里でやってるプロジェクトであるが、何もないところに物語をつくる。使用されていない別荘などを借りて,500円で住んでもらう。結果10組が物件を買い,1組が借りたという。

中谷氏は「気持ちいい」がキーワードだという。リノベーションとホステルは相性がいい。学生のときは安宿に宿泊していたが、ゲストハウスの交流がはやっているという。デザイナーズマンション、ホテルなどにはみんな飽きてる。ロンドンデザイナーズも飽きて,ゲストハウスは20代のものしかないから、居場所がない。日本のゲストハウスを旅経験からとリノベーションとの嗅覚で事業を行っているという。
竹内氏は新築と改築は改築の方がクライアントの驚きが大きいという。新築は出したお金と一対一対応しているが、改築だと驚きがあるのだ。また、改修だと「家を守りたい」など物語が起きやすい。できたらおしまいでないし、区切りがくる。改築は今を取り入れて進まなければならない。それも地域なども巻き込んでいく。みかんぐみの所員が馬場氏の本を読んだら地元に自信がついたという。新築だが、街自体を換える必要がある。湘南を超えようという野望があるらしい。
納屋氏は山奥の家族だから仲がいい。息子が出ていたが戻ってきた。二世帯は世帯間で問題が多い。どういう距離をつくるか。生活の空間は違うが,風呂は共用でつかう。周りの土間は暖かく誤算がすごかったと内部の事情を語る。

山崎氏はバランス、生活空間のなかのコンサルティングまで入り、その話を紡いでいくか。そこから、地域へと第二部へつないだ。

第二部は松永安光氏、芝川能一氏、清水義次氏からのプレゼ。
新堀学氏の司会。ベテランの方々に、活動、自分自身がプレイヤーではなく、プレイヤーを集めたりなどの場を作るということを目指されているとしてプレゼをしてもらう。

松永氏は中国のリノベーション、上海周辺と北京の事例紹介。
鹿児島大学でまちづくりを教え,その後上海で教育に携わる。
周庄という水郷古鎮開発の草分けの地域は、アメリカの実業家がこの街の橋の絵を気に入り、寄贈することで有名になったことであったという。1986年リノベーションを軸に再開発をすることになった。同里など古鎮のリノベ事例を以下で紹介する。
まず、モーガンシャン通り50番通りの国営紡績工場の再生した。アトリエ,ギャラリー、アート作品のショールームがある。
シンティアンディ石庫門と言う石造の有名な場所があり、香港のデベが入札に応じたとき、低層のまま修復して、それを見下ろすように高層マンションをたてることを提案、この計画が成立。これが成立したため、このような歴史的建造物地区を高層で囲むことが1つのビジネスモデルになっている。ただし、家賃がとてつもなく高い。シャンパン一杯で千、二千円ほどだという。ティエンツーファンでは労働者用の長屋の再生。創意産業の集積地にする事業で「クリエイティブに関わる人」しか住めないという限定があるが庶民も住んでおり(?)、アートの空間が混在する、多様性のある経験ができる。
ジーバオ(七宝)は地下鉄でいける古鎮。(他はタクシーなど利便性が悪い)朱家角は上海市内にありバスでいける。蘇州はI・M・ペイの故郷、実家が獅子林にあるという。杭州は歴史的遺産が観光資源。北京の798芸術区はホアン・ルイが軍事工場を発見、東京画廊の社長を連れてきてそこにオープン、工場とアートの親和性をアピールし、2004年にアートイベント、現在に至までアートセンターとして知られる。

次に千島土地の芝川氏から、北加賀屋について。
まず会社について。大正区の町名から名称はつけた。伝統的な地主であり、当初から資本と経営を分離しており土地の賃貸を主にしている。借地借家法などで肩身の狭い思いをしているという。
平成9年をピークに駐車場は減少し、建物つきで返還されると、地代がはいってこない、固定資産税などの負担がある、人が住まないと維持されないといった問題が浮上した。
地域のエポックメイキングは名村造船所跡地だという。造船所は現状のまま返還され、建物の中に箱を埋め込みスタジオパルティッタがつくられた。
名村アートミーティングがあり、ここからアートの可能性を議論していく。30年目標で、モノと金と人で物事は動くうち、モノと金はあるのでモノだけを提供していた。
名村造船所の前にある西洋風の建築「パラドール」は国民宿舎という意味であり、社員寮である。カードロックがかかっており、家賃を払わないと翌月は入れないという。

明治村に芝川邸という武田五一の作品がある。震災後で痛んだものを作り直して建てている。
東京の木場は行政のものだが、大阪、平林の私有水面が余っており、そこにフローティングハウスをつくったという。土地に建たないので確認申請なしだ。

次に
アフタヌーンソサエティの清水義次氏。
「まちをリフォームする」。大阪のリノベーションより自由度があるという。
1つのビジネスモデルがあると、それが伝搬する、それをもう少し拡張するといいのではないか。
アートイベントを東神田などで行う。まちづくりのマネージメントとしての家守。不在地主に代わって家屋を管理する役割の人である。
衰退エリアの不動産活用は経済活動が停滞すると,不動産が遊休化、しかし、不動産の有効活用だけではだめで、新しい産業を作り出すことが大切。継続性の問題。下心として、中谷氏の観光業であるということ。狙いとして新しい都市型の産業をどうつくるか。
名村ドックはある規模の使い方として衰退エリアであり少子化で、学校の遊休不動産がある。その活用はコミュニティの復活にもつながる。歌舞伎町に新しいコンテンツビジネスが新宿区のテーマ。旧四谷小学校の廃校から、ここに吉本工業の誘致を行った。大阪でも機能誘致をやればいいのではないかと氏はいう。吉本が入って,神保町に借りていたビルと比べて,コミュニケーションがよくなった。コミュニケーションがリノベーションのテーマになっている 路地を庭として使って中心線より少し無効まではいて,その隣の人も同じことをする ドライであるが寛大なコミュニケーションの復活をリノベーションで行うべきではと氏は提案する。
「3331アーツ千代田」は秋葉原末広町に3月14日にプレオープンするという。

プレゼが終わり,リクルート住宅総研の島原氏からコメント。
顧客のアーティスト,外資系への移転はイノベーション普及理論の当てはまった。飛びつくのはリスクをおそれない人、次にイノベーターと顧客が代わってきているように、住宅でも浸透してきたのではないかと氏はいう。
共通として単体の住宅から集積のまちづくりでは最初はアーティスト、クリエイターをよび、混ぜてしまう、フロリダのクリエイティブシティでいってるように、仕組みづくりとして,建築、都市、不動産の人がもっと交わるべきだとした。

新堀氏は第二部は第一部に比べてもう少し長い構想スパンだという。登場人物が一人ではなく、世代になる。時間的蓄積のリソースが100年後、200年後をどうデザインするか。「複線歴史」を未来に向けて投げていく(3331など)

そこでプレゼンターにどのくらい未来まで考えているかを質問。
千島氏は街は30年 20年前身、10年で衰退と考えているという。
松永氏は30年を1つのレンジ。提案したことがすぐではなく30年あれば実現するのでは、という考え方。
清水氏はリノベーションのおもしろいところは今やろうと思えば明日からできることだという。やりたいなあと思えば明日からできるのがおもしろい。エリアがかわるのは、石の上にも5年 そこから先はよくわからないが、10年くらいかなあ、と。街割りは一番長く続いている。街割りは大きな資産。これを考えると何百年。車とのバランスを取るべきで、街割りのこともう少し考えるべきだとした。

第三部は、他のプレゼンターを交え,懇親会を兼ねた討論会。