生きること。

生きているということ、いま、生きているということ。

谷川俊太郎氏の詩。極度の時間差を経て、言葉の豊かさに触れた。この詩を以前に見たのはいつだろうか。

詩。言葉という効力、豊かさを言葉によって発揮する羅列群。
言葉が持つ意味を意味付けるのが文脈であれば、詩の文脈はそれほどの強度を持たない。

音にする、音読するという行為を経ることでそれは文脈以上に身体の奥まで、意識の片隅にまで行き届く。

文章に触れることと詩に触れることは、海と空くらいの違いがある。構成する原子の成分は同じでも、状態が違い、人間の飛ぶことと泳ぐこと、感じることも違う。

詩は経験に近く、文章は理論である。それを言葉で表現するというところに詩の自律性がある。

文脈を持たないことが、言葉の意味を相手に委ねる。受け手は自らの経験を、意識を言葉一つひとつに投影することで「読む」。

何を感じるか、何を思うかは自由。それが豊かさとしての表現なのであれば、至極非効率で、圧倒的な交換不可能を孕む。

しかしそれは、最終的には個人に回収される存在として、的確な表現手段として在ることができる。