・李禹煥美術館、地中美術館 設計:安藤忠雄

瀬戸内海、直島にある2つの大型美術館。他の「家プロジェクト」とは一線を画す。
というのは、両方の美術館は安藤忠雄の美術館の中でも、建築への導入部、本体に特徴がある部類であるからだ。光の美術館のように普通のものとは違うコンクリート打ち放しの壁を通じて入り込む純粋な光と落とされる影、マッスな空間をダイレクトに感じさせる強い幾何学形態とそれらのアート作品との強い共犯関係。直線的で緊張感を富むアプローチ空間は、地下空間に入り込む、一種の原始空間へのリセットとして存在する。そして高い壁のすぐ上には空しかない。李禹煥にしろ、地中美術館ジェームズ・タレルにしろ、安藤なのか作家なのかわからない両者の介在した空間がある。それは既に、サイトスペシフィックアートの一部であり、空間表現なしには成立しない作品となっている。
このアートとの関係性を忠実に設計できているのは今までみてきたホワイトキューブの建築にはまったくない。もちろん、安藤建築の中にホワイトキューブがないわけではない。しかし、アーティストとの関係でここまで親和性に富み、かつ、どちらからの影響で空間の方向性が決まるといったものでもない。安藤建築における、コンクリートの使い方、光、影の使い方があってこそのアート作品であり、アートとの共犯関係あってこその安藤建築である。