・海の駅「なおしま」設計:妹島和世+西沢立衛/SANAA

直島へのフェリーからの来訪者を迎える海の駅。設計はプリツカー賞受賞建築家であるSANAAである。
妹島和世西沢立衛の手がける建築には、極限まで絞られたような鉄の柱、薄い屋根が特徴的に捉えられる。しかし、同じ瀬戸内海のアート作品である中の谷東屋や荒神明香作品展示のためのA邸やS邸とは表現目的が違うのではないかと思う。
単純に捉えれば、この規模で単機能の建築物であるこれらはスペックとしては同じであろうとも、ガラスの使い方が全く違う。今回のこのフェリー乗り場は、正方形グリッドを装い、部分的に壁が存在、多くは柱によって構成されている。佐々木睦郎による構造解析により成立しているこの空間は、「軽さ」でも「主張」でもなく「消去」に近い。所々に設置されている壁は構造的な役割はもちろん、鏡面にすることによって瀬戸内海または直島の自然を映し込ませ、ただただ屋根の下の「空間」のみがある。そこには、チケット売り場やカフェの裏側もガラスによって見えているし、対角線の反対側にいる人も見える。
「フェリー乗り場」という船を待つ機能であるからこそ、この広場に屋根をかけただけの空間が必要になった、そう考える事もできると思う。そしてこの、極細の柱で支えられるように見えるエッジの効いた屋根から窺える緊張感こそ、「旅」という緊張感そのものであるとも受け止められた。