MIHO MUSEUMI.M.ペイ






桃源郷を模したという、信楽駅からバスで20分ほどの場所にある美術館。都会からの距離、山に埋もれた建築物であることを考えると非日常的な要素を前提条件としてもつ非常に恵まれた与条件。しかし、メインアプローチの下を流れる川が桃谷川という「軽い」偶然にも恵まれたとはいえ、敷地環境に対するストラテジーのみに頼り過ぎではないか。建築的な美というものが発揮されていない、いかにも資本主義のデザインである。トンネル、吊り橋の土木的スケールに美術館すらも巻き込まれている。逆に言えばよい連続性を保ってはいるが大理石を使用したインテリアによる古代ギリシャや古代アジアなどの作品との調和は都市部における偽造的表層文化となんら変わらない。土木的スケールから身体的スケール、そして緻密な職人技術までの過程を空間として流動化しきれていない。
環境/開発の二項対立の打開を期待してはいたが、開発側の強さを感じずにはいられない。強い正面性によって空間把握はある程度可能であるが、環境−空間−身体の呼応関係を考えるとそこまでの正面性とレジビリティの必要性があるかが疑問である。MIHO MUSEUMが抱える文化的価値というのは古代エジプトなどにおける芸術性とそれを支える技術力である。

定評のある(???)アプローチのシークエンス