村野藤吾。関西圏における著名な建築家である。
「様式の上にあれ」という有名な著作のなかで彼は次のように語っている。
義すなわち権を知り、これを知ることによって終始し、私の修養によって得たる、構造と、装飾と、そうしてこれを統一するある理想をもって、私の建築行為の最初の出発点としようとするものである。
おそらくこれは、建築家としての「権利」を知り、その上で建築家としての「作家性」という理想を掲げ、統合することが建築家の権利である、ということだろう。それは単に自分の主観を押し付けるのでなく、相手を知ってその上で「統合」という形で「建築」を構築する。
そのために彼は建築界へ過去に根拠を模索する「様式主義」に疑問を呈し、さらに建築という「付加物」が土地の価値を向上させるという視点をもって資本論はもちろん、その流れから得られる微視的な地代、借代などの研究を行った。

様式の上にあれ―村野藤吾著作選 (SD選書)

様式の上にあれ―村野藤吾著作選 (SD選書)