シビックプライド―都市のコミュニケーションをデザインする (宣伝会議Business Books) シビックプライド―都市のコミュニケーションをデザインする/読売広告社都市生活研究局
都市を横断する思考、分野を横断する思考。「プロフェッショナル」という専門的に閉じた完結性のある言葉が相対化され、社会、都市の抱える問題的主題の解決へと導くメディア/コミュニケーション的手法を紹介する。
建築が単なる経済的、政治的権力を表象するものからメディアにその表面的権力を譲ったのを象徴するかのように、広告代理店である読売広告社が中心となって作られている。しかし、コンテンツの内容は何かが突出してよりよいメディアだという言い方ではなく、それらはあくまで方法論に過ぎず、都市が結果的に固有性をもつ、つまり市民が都市と一体になることを目的となることを主張する。「コミュニケーションをデザインする」とサブタイトルにもあるように、デザインが目的的に語られるのではなく、バラバラに存在する人、物などを関係付けるために明快な構図で論旨がはっきりしているのがこの本の良点か。
アムステルダムで実際に起こった「I amsterdam」を「I amstemaar」と置き換えてTシャツに印刷した事例は、市民が誰でも使えるコピーと、かつ安価に表現を自由にできるようになった現代だからこそ都市と人が相互に関係できる。グラフィックデザインの可能性を見いだした成果である。また、再開発が行われる都市でも、前述のコピーと同様に、テレビコマーシャルなどを利用して「ここで起こっている都市開発はあなたの、そして子どもの将来に関わっている」ということをアピールし、翻訳して定着させることに成功している。
広大な敷地で開発を行うハーフェンシティではインフォメーションセンターに更新される巨大な敷地模型を展示、さらにその模型をみて開発地区をまわるというイベントを行うことによって過程を共有し、完成と同時に市民に開かれた存在にすることに成功している。他にも建築では、機能性から表象に移行させる「メディア」として建築を機能させることにより活き活きとした都市をつくっている事例もある。