・いざ近代化遺産へ


高崎駅から上州鉄道で40分。一見どこにでもありそうな一地方都市に降り立つ。
曇り空と早朝の独特の空気が、駅を降りた右手に佇む煉瓦倉庫と一体になり、「地方」という事実をより重くしている。
上州富岡駅の駅前からは商店が建ち並ぶ。街が目覚める時間になると、順々にシャッターが開き、店の前には色とりどりの商品が並ぶ。大通りに面した店にはところどころに「世界遺産」と書かれた旗がある。
ここ、上州富岡駅には世界遺産暫定リストに選定された旧富岡製糸場がある。今日ここに来たのは、大学生、大学院生を対象にしたセミナーに参加するためだ。1日目のセミナーと2日目のワークショップで、近代化遺産の知識をつけ、と活用を考える。
1日目は3つのレクチャーと懇親会。セミナーでは富岡製糸場総合研究センター所長の今井幹夫氏が江戸からの歴史的変遷を、実際に広大な敷地を回りながら文化庁文部科学技官の西岡聡氏が現地解説をレクチャーしていただき、筑波大学世界文化遺産学専攻教授の斎藤英俊氏には世界の近代化遺産についてと、広範で濃密な時間を過ごすことができた。
懇親会では明日レクチャーしてもらえる国立博物館参事の清水慶一氏や教育委員会の方など、普段は絶対に会うことのない方々とお話をさせていただいた。その後ホテルの部屋で芝浦工大の院生のF君を交えて、研究室の人と飲む。