グレン・マーカット展、シンポジウム
あまり日本では知られていないオーストラリアの建築家、グレン・マーカット。プリツカー賞など多くの賞を受賞し、世界中で教鞭をとっているというのに日本のジャーナリズムはあまり取り上げてこなかった。おそらくそれは氏がオーストラリア固有の建築家でありさらに日本の風土との決定的な差がそうさせてきたのだろう。
氏は幼少からオーストラリアという土地に育てられた。生まれてから危険な環境の中で飛行機やヨットを作りその環境の中でデザインがどのように機能するかを理論ではなく身体と感覚で学んだと言える。例えば解体可能なボルトで構築されたマリーショート邸は、材料を無駄にしない改築という意味でも持続性のある建築である。その他にも、ブラインドの効果的な使用や暖炉と岩を使い暖房器具の有効率を上げる試みも見られる。そういう意味でも場所を読むことがそのまま建築になっている。それが建築環境へのアプローチを形にし、固有の場所に流れる音楽を乱さず妨げない異物ではなく調和した物体として建築を存在させている。
さらにその環境への依存は、生命体のバランスを保つとともに大地と共に生き、心に響いてくるものとなる。このことが分かるのは、感覚で、身体で学んできた氏だからこそできることである。

ギャラ間の展示も少し変わったものだった。模型を断面パースのようにみせるため、図面をアクリルに貼り、そこに断面模型をつける。断面的に良く思考されている氏のコンセプトを忠実に再現できるものであると思う。

ポストモダン的状況
国家的表現の相対化
「かわいい」「おもしろい」など超主観的・個人的評価