・可能世界空間論――空間の表象の探索、のいくつか

―情報技術はもはや、身体まで到達しつつある―その可能性を身体的に、感覚的に、ヴィヴィッドに介入してくる展示だった。
工学デザインとして折り紙を持ち込み、「立体形状の折紙化」「自由折紙」「剛体折紙」の三つの折紙理論と対応するデザインツールを提示する舘知宏。一枚の面から出発するその構造体ともいえる力学系は、一端にかかる力が瞬時に全体に影響を及ぼし、その力学的影響は形状の中に内在したまま保存される。そのパラメータと全体という関係性からは、自らの位置と空間全体と連続することを想起させる新しい試みとなっている。
柄沢祐輔と松山剛士は、ポール・クルーグマンの経済的な都市自己組織化理論を逆照射し、「中心の変化する都市」をヴァーチャルに提示する。都市自体が物理的に変化することを提示することはコンピュータによって可能になるといえる。それは、「都市計画」といった近代的概念をどう乗り越えるかという問いでもあり、「ゾーニング」「市場」といった政治経済的他律要素によって一主体から見ると「勝手に」自動生成する都市をさらに把握、その上をシミュレーションしようといった試みであるともいえる。情報環境の成長によって政治的、そして建築技術的にも成長が見込まれる現代において、その目的の明示化、ツールとして知を集合させることが一元的に近い状況になることが必須であるのかもしれない。
その情報環境の成長は、「デザイン」という行為を容易に飲み込んでしまう。田中浩也、岩岡孝太郎、平本知樹の提示する「オープン・(リ)ソース・ファニチャー ver.1」は、その個人的営為の可能性を踏まえた上で人をアルゴリズミックに動かすことを基本とする。さまざまな大きさの基本形を物体化し、それを個人の意図ではあるが他者からするとランダムな組み合わせを表出させる。さらにそれによってつくられたフラクタルな造形には、家具、プロダクト、空間というさまざまな機能をも個人によって付加される。
エキソニモによる展示は、モニターを媒介にした現実空間への介入である。ARとも呼びうるものであろうか。モニターには展示会場だけでなく会場のあるICCの場所が映し出される。被験者はカーソルを動かし、キーボードで入力することで現実を変化させる。そしてその現実は幾層にも亘るレイヤーから構成され、さまざまなレベルから世界に介入するのである。